【ご来場御礼】

【ご来場御礼】
第70回定期演奏会、無事終了いたしました。年末のお忙しい時期にご来場いただき、誠にありがとうございました。


40周年と70回目の節目となる演奏会。満を持して選ばれたブルックナー交響曲第8番について、実際に演奏して感じたのは「とにかく、すべてが途轍もなく大きい」という一言に尽きます。楽章ごとに演奏時間は長くなり、規模や構成も次第に複雑化していきますが、第4楽章のコーダで全楽章の主題が同時に鳴り響き、音楽の基本ともいえる八長調のミ・レ・ドで全てが終わる——。こんな曲を思いついたとしても、音楽として成立させられる人はおそらく存在しないのではないでしょうか。まさに天才の所業だと感じました。


演奏時間の長い作品であれば、水響もこれまで数多く経験してきました。団員の多くが複数回演奏しているマーラーの交響曲第9番も、演奏時間だけを見ればブルックナー8番とほぼ同程度です(当社比)。しかし、ブルックナー演奏後に訪れる脱力感、あるいは解放感は、なかなか言葉では表現しきれないものがあります。単純な比較はできませんが、そこに至るまでの過程が非常に多岐にわたり、常に強い緊張感を強いられるからこそ、この第4楽章コーダには凄まじいカタルシスが生まれるのだと感じました。

実は、長くオーケストラ活動を続けてきましたが、この曲を演奏するのは私自身、今回が初めてでした。これまで数多くの作品を経験し、終演時の高揚感を味わうことはありましたが、これほど強い「終わってしまった」という感覚に包まれたことはありません。その一方で、作品があまりにも大きく、まだ十分に理解しきれていないという思いが残っているのも事実です。

演奏会後には、しばらくロス感が続くことが多いのですが、この作品の場合は、単なる喪失感ではなく「もう一度経験してみたい」という探求心が勝っているように思います。そう思わせる作品に出会えたこと自体も、非常に稀な経験でした。今回は「御礼」というより、個人的な感想や想いを
つらつらと並べてしまいました。レスピーギについて十分に触れられていませんが、いわゆる“野人”ブルックナーと比べると、音楽的な魅力が非常にストレートに伝わる、素晴らしい作品だったと思います。オルガン脇に配置したトランペットをはじめ、冒頭のクラリネットなど、ソロを担った各パートの演奏も見事でした。

水響は、この大きな経験を糧に、さらに新しい世界へと踏み出していきます。次回は、まさにその第一歩となる演奏会です。渾身の名曲プログラムに挑みます。40年の活動の中で、メンデルスゾーンは意外にも今回が初演。シューベルトも、第19回演奏会冒頭で演奏した「ロザムンデ序曲」以来となります。ドヴォルザークのチェロ協奏曲では、若手チェロ界でもとりわけ繊細かつ端正な表現で注目されている東京都交響楽団首席チェロ奏者・伊東裕さんをお迎えします。指揮は、実は我々のことを齋藤さん以上によくご存じなのでは、と思うほど縁の深い田中一嘉さんです。2026年4月29日(祝)、昭和女子大学人見記念講堂にて開催いたします。皆さまのご来場を、心よりお待ちしております。

水星交響楽団運営委員長
植松 隆治