胃袋で紐解くバルトーク

水響ブログ、久しぶりの更新となりました。普段はフェイスブックページの中の人としてアップするネタを探したり、委員長の徘徊日記に突っ込みを入れたりしております、崖っぷちアラフォーバイオリン弾きが初めて書かせて頂きます。
次回、第51回定期演奏会はご存じの方も多いかと思いますが、ハンガリーが生んだ20世紀を代表する作曲家、バルトークの作品を3曲取り上げるオール・バルトーク・プログラムです。ハンガリーと言えばブラームスのハンガリー舞曲、そしてバルトーク以外にもリスト、コダーイといった歴史に名を残す作曲家や、指揮者のゲオルグ・ショルティ、ピアニストのアンドラーシュ・シフ、チェリストのミクローシュ・ペレーニ、ダーヴィト・ポッパー、ヤーノシュ・シュタルケルなどが思い出されますが、文化の大いなる担い手の一つである料理はあまりなじみがないのではないでしょうか。そういう私もハンガリー料理というと粉末のパプリカを多用することと、グヤーシュという煮込み料理くらいしか思い浮かびませんでした。そこで少々調べてみたところ、古来より様々な民族が流入し、定着したハンガリーの歴史と同様、食文化も素朴な煮込み料理やローストを主体としつつ、香辛料の使い方などにイタリアのルネサンス文化をはじめ、ドイツやオーストリア、トルコの影響を受けているのだとか。確かにオーストリアやドイツの料理と共通するところは多いようです。
暑かった間はあまり凝った料理を作る気がしませんでしたが、急に涼しくなって料理意欲がわいたので、「食べてバルトークの理解を深める」をテーマに、日本で言う味噌汁の存在だというグヤーシュと、ハンガリー風のアップルパイに挑戦しました。

グヤーシュは、放牧や農作業中に時間をかけて自宅で昼食をとる手間を省くため、戸外に作った釜に大鍋をかけて昼食用に作った釜煮グヤーシュを起源とし、今でもハンガリーはもとより、オーストリア、ドイツ南西部バイエルン地方、ルーマニア、スロヴェニア、チェコ、スロヴァキア、ポーランドなどで食べられています。地方ごとに、そして家庭ごとに作り方は様々だそうですが、本やインターネットで調べて、最も釜煮グヤーシュに近く、手軽に作れるレシピで作りました。

●グヤーシュ
1.2センチ角に切った牛肉と豚肉合わせて1キロに塩をふって30分ほど置きます。
2.1センチ角に切った玉ねぎをサラダ油大さじ1を敷いた鍋で黄金色になるまで炒め、いったん火からおろし、粉末パプリカ大さじ1を振り、その上に塩をしておいた牛肉と豚肉、みじんぎりのにんにくを乗せ、角切りにしたトマトと赤ワイン150㏄を加え火にかけます。
3.沸騰したら弱火にしてふたをし、1時間ほど肉が柔らかくなるまで蒸し煮にします。
4.肉を煮ている間に、にんじん1本、セロリ2本、パプリカ2個、じゃがいも4個を2センチの角切りにしておきます。
5.1時間たったら鍋の中身をかきまぜ、にんじん、セロリ、パプリカを乗せ、月桂樹の葉を1枚、あればキャラウェイシードとマジョラム少々を加え、混ぜずにそのまま蓋をしてしばらく蒸し煮にします。
6.最後にじゃがいもを加え、ひたひたになるように水を加え、じゃがいもがやわらかくなるまで煮て、塩こしょうで味をととのえます。
7.ガルシュカ(すいとん)の生地を作り、煮立った鍋に少しずつ落とし、30秒ほど似て浮かんできたら出来上がり。
☆食べるときにお好みでサワークリームを少し入れるとコクが出て美味しいです。

●ガルシュカ (すいとん)
小麦粉200グラム に水80㏄、卵1個、塩少々を加えたものを少しずつ加え、だまにならないようになめらかな生地を作り、30分ほど寝かせます。

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ずっと前に自由が丘駅すぐ横の不思議な空間、自由が丘デパートの中にあるハンガリー料理のキッチンカントリーで食べて以来のグヤーシュでしたが、食欲をそそるパプリカの香りと、肉と野菜の美味しさがしみじみ味わえる滋味深い味でした。

●ハンガリー風アップルパイ
こちらはハンガリー文化センター(現在は閉館しているみたいです)のホームページに掲載されているレシピそのまま(量は半分で)作ってみましたので、作り方はリンク先をご参照ください。外側の生地の甘さと、生のまま細長くすりおろしたりんごのあっさりした甘味がいいバランスで、ボリュームがありながら胃もたれしない優しいアップルパイです。生地はパイというよりサブレとケーキの間のような感じですが、バターが多くとても扱いづらいので要注意。生地を敷いたところにりんごを入れるとき、りんごの汁けを絞って出来る100%りんごジュースがこれまた美味しいです。
http://src-hokudai-ac.jp/hungary/tips/receptek.html#almaspite

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たった二品ですが、最初の専門的音楽教育をウィーンで受け、その後ドホナーニの薦めでハンガリーに戻ってブダペスト音楽院に学び、生涯に亘って民族音楽の採集と研究に力を入れたバルトークの作品が、土着的力強さと洗練されたエレガンスを併せ持つのと相通じるところがハンガリーの料理にもあるような気がします。
祖国の右傾化を嫌って第二次大戦中にアメリカに渡り、ニューヨークで没したバルトークですが、きっとアメリカでも祖国を思ってグヤーシュを食べたはず・・・などと想像しながら味わった後では、オケコンも違って聴こえるから不思議です。

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